Antiquites Brocante Paris by 桜アンティキテ
ヴィンテージ 広告-ファッション雑誌-1944年2月-カール「エリック」・エリクソン作
ヴィンテージ広告の切り抜き。
年代: 1944年2月
雑誌:『Harper's Bazaar(ハーパーズ・バザー)』
デザイナー:Elsa Schiaparelli(エルザ・スキャパレリ)
スキャパレリの『ペルシアン・プリンス・ディナースーツ』
イラクの寓話に登場する何よりも豪華な装い。
贅沢なブロードクロス製ジャケット、流れるように長いライン、惜しげもない金の刺繍、クレープ素材のドレス、彫刻のようなシェヘラザード風ターバン。
この作品は中東のエキゾチズムからインスピレーションを得ており、紫を基調とした優雅なシルエットに、豪華な金の刺繍と黒のアクセントが華やかな印象を与えています。
『ペルシアン・プリンス・ディナースーツ』のイラストを手がけた「Eric」とは、アメリカのファッションイラストレーター、カール・エリクソン(Carl Erickson、1891年–1958年)のことです。彼は作品に「Eric」という署名を用いていました。
エリクソンはシカゴのアート・インスティテュートで学び、1914年にニューヨークに移住後、ファッションイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせました。1920年代から1950年代にかけて、アメリカ版『Vogue』や『Harper's Bazaar』などの主要ファッション誌で活躍し、特にエルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)やジャン・パトゥ(Jean Patou)、ルシアン・ルロン(Lucien Lelong)などのデザイナーの作品を描きました。
彼のスタイルは、初期には写実的で詳細な描写が特徴でしたが、パリでの生活を経て、より柔らかく表現力豊かなタッチへと進化しました。エリクソンは、ファッションショーや社交界のイベントなどの現場でスケッチを行い、その場の雰囲気や動きを捉える「報道的」なイラストレーションでも知られています。
『ペルシアン・プリンス・ディナースーツ』のイラストは、彼の成熟したスタイルを反映した作品の一例であり、1944年2月号の『Harper's Bazaar』に掲載されました。この作品は、スキャパレリのデザインとエリクソンのイラストレーションが融合した、当時のファッションとアートのコラボレーションを象徴するものです。
<裏面>
こちらの画像は、フランスのファッションブランド、Maison Jean Patouの作品を描いたファッションイラストレーションです。
イラストの左下には「MODEL FROM PATOU(パトゥのモデル)」とあり、右下には「Bérard」というサインがあります。この「Bérard」とは、クリスチャン・ベラール(Christian Bérard, 1902–1949)のことで、フランスの著名なファッションイラストレーター兼舞台美術家です。
作品の特徴:
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優雅な流線型のシルエットで描かれた赤色のロングドレス。
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深緑色のトップスに、ファーで縁取られたジャケットを羽織った華麗なデザイン。
クリスチャン・ベラール(Christian Bérard)について:
ベラールは1920年代から1940年代のパリで活躍し、ジャン・コクトー(Jean Cocteau)などの芸術家たちと親交を持ちました。特に舞台美術やファッション・イラストレーションで知られ、その特徴的な水彩画風のスタイルで、当時のファッション界を華やかに彩りました。
ジャン・パトゥ(Jean Patou)について:
ジャン・パトゥは、1920年代~1930年代にかけて活躍したフランスの著名なファッションデザイナーであり、スポーツウェアの先駆者としても知られます。彼の作品は優雅でありながらも実用的なデザインを特徴としていました。
ただ、ジャン・パトゥ自身は1936年に早逝しているため、1944年の『Harper's Bazaar』に掲載されたこのデザインは、ジャン・パトゥが設立したメゾン「ジャン・パトゥ(Maison Jean Patou)」が、彼の死後に後継者の手で継続的に展開していた時期の作品です。
実際、ジャン・パトゥのメゾンは彼の没後も複数のデザイナーを招き、ブランドの哲学や美意識を継承・発展させました。第二次世界大戦中およびその直後(1940年代前半〜中盤)もメゾンのデザイン活動は続けられており、1944年2月号の『Harper's Bazaar』に掲載されたこのイラストは、まさにそうした後継デザイナーによる「ジャン・パトゥ」のブランド作品として掲載されたものと考えられます。